12月1日付で笛吹市役所が入札参加資格停止措置の処分をおこなったことが発表されました。
この件について、指名停止措置をおこなった市の姿勢は、正当に評価されるべきケースと考えます。
処分は、この業者が当該建築確認申請書を作成し、設計および工事監理者として資格、氏名、建築事務所名などを記載しているにもかかわらず、工事監理を怠ったこと(建築士法第2条7項参照)により、暴力団に財産上の利益を与えたことから笛吹市建設工事請負契約に係る入札参加資格停止等措置要領に照らして、市工事の請負契約の相手方として不適当であるという判断によるものです。
当該業者のコメントとして報道で明らかになっているものの中には、「今後は信用調査をするなどして法令順守の徹底を図りたい」(毎日新聞山梨版)、「現場確認はすべきだった」(山梨日日新聞)などとして、「「法的には処分の取り消しを求めることもできるが、地域感情などを考慮し、処分を受け止めたい」としている」(山梨日日新聞)とのことですが、市役所の考え方に比べて業者側の姿勢には疑問を感じざるを得ません。
当該業者は、笛吹市役所の登録業者になっていますが、3ヶ月の指名停止は、対笛吹市の仕事の受注という意味では、これまでにもその実績がないことから実質的な不都合は何もないものと考えられます。
しかし、指名停止処分を受けた業者は、笛吹市の大きな公共事業を請け負ってもいる親会社が設立した子会社で、一昨年までは取締役や監査役が親会社の取締役や監査役も務め、当該建築確認申請が作成・提出された時点でも監査役が兼任しており、現在も代表取締役は親会社の監査役を務めています。
わたしが疑問を感じるというのは、「建物の名義は一般の人で書類上では暴力団と関係あるとはわからなかった。確かに現場確認をすれば気づいたかも知れないが、建築基準法では義務づけられておらず、責任を問われることに非常に困惑している」(NHKニュースの魚拓)というコメントや、親会社の会社概要の沿革から1981年にこの業者を創設したことが削除されていることから、親会社もあわせたグループ全体として保身に気持ちが動くことはあっても、軽率なことをしたことへの反省の気持ちはストレートに見えないというところです。
民間の仕事で業をおこなっているだけならとやかく言うつもりもありませんが、税金でおこなわれる仕事を受注する事業者として問題があるばかりか、真面目に事業を営んでいる他の事業者や税金を納めている市民に対しても、失礼千万な話であるということの認識が非常に小さいという気がしてなりません。
また、笛吹市が全市を挙げて暴力追放運動を展開している現状にあって、さらに親会社も笛吹市の大きな仕事を受注している事業者であり、業者としての倫理観が問われる立場からも、たとえ4号建築物であっても工事監理者として現場確認を行うことは建築士法に要請されていると考えるべきですし、このことの趣旨は判例でも明示されています。
今回、確認申請を受け付けた指定確認検査機関というのも問題がないわけではありません。
4号建物の構造関係の単体規定審査を簡略化する4号特例によって、代願申請が行われ得るばかりか、指定確認検査機関を経由してくることよって、市役所への情報到達も遅くなってしまいました。
もちろん、建築行為自体は個人の問題で、法令に合致していれば確認を受けられるものですが、今回のような地域課題となっているケースに関わる建築が確認を受け、実際に建築されるということについては、もっとデリケートであるべきで、何の落ち度もない市民が日常生活の中で苦痛を感じなければならないような事態を大きく助長することとなったことを、重大に受け止めていただきたいと感じています。
したがって、自冶体の問題点を検証する必要があります。