9月21日の定例会開会日、県有地の貸付に係る調査及び検証特別委員会の即日廃止を求める動議が提出されました。
結果として、この動議は賛成20、反対15で可決されましたが、県議会史上とても残念な歴史を刻む結果となりました。
わたしは当然反対しましたが、この結果は県民に対して、表決した議員一人ひとりがきちんと説明責任を果たすべき責務があると思っています。
税金で仕事をさせていただいている公選職の議員として、どのようなかたちであっても自身の考え方を公表すべきで、有権者のみなさまにはそれを求める必要があると考えます。
地方自治制度における議会の役割は、議論し、議決により意思決定することです。
その議論も不十分なまま、意思決定を行うことを「拙速」と言われても仕方ありません。
しかし、議論も意見表明もないままに、言論の府が言論の場を奪うことは、議員としてやってはいけないことだと思います。
このようなことを県民のみなさまに何と説明するのでしょうか。
動議に賛成した議員の方々には、ご自身の責任において説明を果たしていただきたいと感じます。
そして、有権者のみなさまには、選挙における投票行動の際に判断材料としていただきたいと思います。
議会の質を高めるのはまさに民意であり、議会のレベルは民意のレベルと言われます。
正直に言って、この動議が出されることも、その理由も、そして可決されたことも、「恥ずかしい」の一言です。
山梨県議会の議会改革を後退させ、言論の府が言論をたたかわせることを自ら抹殺する。
県民の県議会への信頼を、県議会議員が自ら打ち捨てようとしている。
このような県議会の残念な姿を見て、県民のみなさまは何を思うでしょうか。
有権者は政治に期待するでしょうか。
次代を担う子どもたちは政治家に希望を持ってくれるでしょうか。
そうした思いを込めて、廃止動議に反対討論を行いました。
以下に、討論内容を貼り付けます。
【反対討論】
特別委員会の廃止動議について、反対の立場から討論を行います。
特別委員会では、県有地の貸付全体にかかわる調査及び検証を行うことを目的に、議論が交わされてきました。
これまでの貸付が適正に行われていたのか、改善すべき点があるとすればどのような点についてなのか、責任の所在はどこにあるのか。
特別委員会での意見聴取や現地調査を行うことで、県民のみなさまにもその実態が少しずつ明らかになってきたところです。
これから、県全体の県有地の貸付賃料についても見直しが行われていく段階で、特別委員会を閉じてしまうことは、県民に対する説明責任を放棄することにほかなりません。
動議では、大きく2つの理由が挙げられていました。
1点目は、特別委員会が「地方自治法の趣旨に違反」しているというものです。
まったくの誤解です。これは、県民の皆様に間違った理由で廃止しようとしていることになる、印象操作とさえ感じられる主張です。
特別委員会は、地方自治法第109条第8項にもとづき、合法に設置されています。
そして、2以上の常任委員会の所管に関わる事項について、多様な観点から慎重に審査し、調査を尽くすために、「審査及び検証が終了するまで」とした期限の付け方は、地方自治法上も合法です。
このような特別委員会の設置方法は、他にも例があり、違法でないばかりか、「地方自治法の趣旨に違反した状態」という誤解させかねない表現を用いて廃止しようという理由には疑問しか浮かびません。
明確に、地方自治法に照らして合法であると申しておきます。
2つめの理由として、「審議内容の妥当性」を挙げ、議論を不適切かつ不毛だと述べていますが、特別委員会の議論で県有地の貸付に係る問題点や課題が指摘され共有されたことは、これまでの会議録を読み返しても明らかで大変意義があったものと思います。
確かに、特別委員会の設置は、住民訴訟における昨年11月定例会での和解案の提出が発端と言えるでしょう。
しかし、そもそも設置目的は、県が保有する県有地の貸付地全体について、その貸付のあり方や適正な賃料をどのように判断するのかといった、県有地全体について調査し、検証を行うためです。
訴訟が並行している中で、これに関わる議論が交わされることは全く妥当だと言えますし、それ以外の貸付地についての議論や調査も重ねられており、審議内容が妥当であることは疑いの余地がありません。
これから、県有地全体の貸付地の調査を深めていこうという段階で、県民の皆様とも意見交換を図っていこうという準備を進める中で、特別委員会を廃止すること自体が妥当ではなく、県民にも全く理解されないものと思います。
また、「法的な問題について議論を終了する意思を議決したに等しい」とも述べられていましたが、反訴の議決は「契約が違法無効なのか」「損害賠償請求や不当利得返還請求が認められるのか」という法的判断を司法に委ねたのであって、特別委員会が県有地の貸付のあり方を議論することとは異なります。
そもそも法的な判断を特別委員会が行おうとはしていないのであり、議会としての県有地の貸付のあり方を議論していこうという趣旨は、審議内容としても全く妥当なものであります。
県議会としての県有地の貸付に係る意思表示や調査報告といった成果物は、まだこれから取りまとめていくことになるものです。
本動議に賛成する議員の方々は、大変残念でありますが、説明責任を放棄せよ、職務を放棄せよ、議員の矜持など必要ないと言っているのだと断ぜざるを得ません。
さらには、議会の役割を率先して破棄し、議論しようという他の議員に対する言論封殺ともいえるこの動議が可決されるとすれば、それは地方自治制度における議会の死にも値します。
以上のような理由から、私はこの動議に賛成することはできません。
県議会に送り出していただいて2年5か月。
本当にいろいろなことがある県議会ですが、議論を放棄する議会が見捨てられることのないよう、今後もブレずに、真摯に、議員活動に取り組んでいく所存です。
※1枚目の画像は、9月22日放映のテレビ山梨のニュース映像のキャプチャです。
※2〜3枚目の画像は、同日放映の山梨放送のニュース映像のキャプチャです。
※9月24日付山梨日日新聞の論説にて、廃止動議の件が執筆されていますので、電子版の記事リンクとキャプチャ画像を貼り付けます。ぜひこちらもご一読ください。
【論説】県有地特別委の廃止「議会の死」議員の役割とは
https://www.sannichi.co.jp/article/2021/09/24/00530565