5月18日、第100回東京財団フォーラム「議会基本条例10年〜東京財団モデルから考える〜」に参加してきました。
※筆者注:東京財団モデルとは、議会基本条例において、1.議会報告会(意見交換会など)、2.請願・陳情者の意見陳述、3.議員間の自由討議のいわゆる「3点セット」を組み込むというもの。
この10年の間に制定されてきた自治体の議会基本条例に、この3点セットが入っているかどうかが、一つの大きな評価のポイントになるというような理解をしておくとよいと思います。
司会:今井章子(東京財団常務理事)
モデレーター:千葉茂明(月刊『ガバナンス』編集長)
パネリスト
・江藤俊昭(山梨学院大学大学院社会科学研究科長)
・廣瀬克哉(法政大学法学部教授)
・中尾 修(東京財団研究員・元栗山町議会事務局長)
・千葉茂明(月刊『ガバナンス』編集長)
○千葉
(会場の参加者に)議会改革進んだか?
後退した4名、変わらない2割、進んだ7割くらい
○中尾
地方議会の大きな変化は、意思決定機関である議会への市民参加が当然視されるようになったこと。そういう時代に入ったということ。
栗山町議会基本条例では、請願陳情者ある住民の提案は、政策提案と位置付ける。
住民の提案の権利が生まれ、議会と住民の討論の広場が生まれた。
その意味では、市民にとって使い勝手がいいかどうかがポイント。
東京財団モデルの3要件が組み込まれているかどうか。議会にとってというよりは、市民にとってというところが重要。
議会として、機関として、議会報告会、意見交換会ができているかどうか。議会と行政の違い、住み分け、といったことが、市民の中に育っていくといい。
会津若松市議会基本条例には、議決責任が盛り込まれている。
このことは、説明側に立つということは、相当、議会審議を慎重に行わなければならない。
平成14年に旧本吉町が実施した議会報告会の開催要項。
この時点で、重要な考え方をもとに行われている。
それは、議会の決定事項にかかる町民の知る権利に応え、かつ、議員の説明責任を果たす機会と位置付けている。議会を正しく理解している町民は少なく、より正しく理解を深めていただく機会。
議会報告会に参加者が少ないというのは、議会の議論が白熱していないということかもしれない。市民に関心を持たれるような審議をしていくこと、制度として継続していけるようにしていくことが大切。
初めて議会報告会を開催したときは、議会事務局職員として大変緊張した。しかし、議員は堂々と間違っていることもしっかり話していた。(笑)
○江藤
議会報告会を恒常化していくためにも条例を制定。
市民とどのように作っていくかという中で、栗山町の取り組みは進んできた。
それを前提として、2つ話したい。
かなり苦労した重要なものが、この議会基本条例には入っていると考えられる。
討議する議会、政策形成する議会、この10年間苦労してきた。
720〜750くらいの議会で制定されている。
これは、栗山町の議会などの取り組みがもとになっている。
切り拓いてきたこの取り組みに、全国の議会が応えてきたとも言える。
この10年間は、歴史の手本となるような時代だった。
フォーラムとしての議会。国政と地方自治体は異なる。
二元代表制。地方議会は一院制、直接民主主義がかなり入っている。議会の運営の仕方、討議の仕方が異なってくる。この3つは、地方議会の特徴である。
議員だけでなく、住民や首長を巻き込んで議論を展開し、合意形成を図り、一致点を見出していくというもの。協働型議会である。かつて空想かと言われたが、いよいよ現実化してきている。
そういう時期に来ていると思う。
1,住民自治の根幹は議会。議決の前の日、眠れるか?それだけの権限がある。
2,議会への住民参加
3,フォーラムとしての議会
政策形成の起点が住民。議案が出てきたら、内容を住民と検討。まちづくり集会の実施。
議会改革が進んできたと言うが、市民は満足しているのか?by千葉
→主権者教育、市民教育という視点からはまだまだかと思うが、突破口は出てきている。
○廣瀬
議員間の自由討議(スライド資料あり)
栗山町議会基本条例前文を紹介。
第一義的なミッションは、討議を通して論点、争点を発見すること。そして、それを公開することが討論の広場。その延長上に議決がある。これを明確に述べている。
本気で違った視点を持った人たちが、公開の場で議論するということが、合議体ならではの活動。
多様な地域社会の縮図である。
世論→議員構成、議会の結論ではなく、議会の議論→世論→議会の活動である。
世論だけが判断材料ではないが、世論は判断材料のひとつでなければならない。
議決責任は、説明責任は問われ続け、それを果たせないと議会無用論が起こる。
できれば納得を得ること、そうでなくても、なぜそのように決まったかを理解してもらえることが必要。
議会でこういう議論があったということは、客観的な事実。議員間討議がなければ、その論点をはっきりさせておかなければ、議会報告すらできないのではないか。
議事録に残るところで議員間討議を行わなければならない。
しかし、その実施の難しさを強く感じているのが議会でもある。行政に対し、議案の質疑をするということなら必要性がわかるが、議員間討議の必要性を理解する議員がまだ少ない。
意思決定機関としてみた場合、長の提出議案についての議員間討議こそが議会の本務。
討論は、自分の立場を正当化するための演説。討議は、議員相互に論点の論評をする場ではない。
結論に至った論点を明確化するためには、論点構成の相違そのものを議論する必要がある。
政策立案の会議だったら、委員会条例に基づいたかたちよりはもっとざっくばらんにやってもいいと思う。
議案審査の中で自由討議をする場合は、説明員のいないところで自由討議をする。しかし、傍聴席に戻ってきたら拒否できないので、あえて説明員のいる状況でない場を設定することはあっていいと思う。
○千葉
議会基本条例の10年を俯瞰(資料に基づいて説明)
・議会のホームページに会派の考え方や理念などを明示していってはどうか。
議会改革の新たな展開
1,議会事務局職員のネットワーク
2,議会例規の体系化 大津市議会
3,議会ICT化 流山市議会、逗子市議会、鳥羽市議会など
4,災害対応 議会BCP
5,4年任期を見通した議会版実行計画 大津市議会
6,高校生のキャリア教育支援 可児市議会 高校は県行政であり、そこに切り込んでいった。
7,議会における「対話」の浸透 久慈市議会など
8,議会評価の進展 議会白書、外部評価など
今後の展望と課題
1,議決責任の検証
2,議員のなり手不足の解消 浦幌町議会
3,総合計画に議会としていかに切り込むか
4,地方創生・地方版総合戦略、地域づくりと議会
5,議会の強みをいかに活かすか
・多彩な公選職
・民意の反映
・権限の強さ 自治法96条
・既存制度にさほどとらわれない
→政策形成サイクル;会津若松市議会、会議条例;大津市議会、高校との連携;可児市議会
合議機関として「総意」を示せるか
・多様な意見の聴取 未成年含め
・議会における自由討議の実践、合意形成の仕組みづくり
・議会費の編成権、それに伴う事務局職員人事・採用・育成、任命権者である議長任期
→地域づくりの主要な担い手としての議員の存在感向上
○(千葉)議会の存在感、議会改革は、高まったか、進んだか?
中尾;ここに集まっているような人の中ではかなり制度は動いたと思う。しかし、市民の中では、市民が納得するような変化は起きていないと言えるのではないか。そこがこれからの課題。
市民の側もおまかせ過ぎるというところから脱しきれていないが、もっと議会の側が動かなければならない。
江藤;予想以上に進んだ。栗山町の条例案の段階では、こういうのができるといいですねくらいだった。議会改革のリーダーシップは議長に依るところが大きい。また、委員長のさばき方、討議の仕切りなど、これも重要。議長、委員長のリーダーシップ。
廣瀬;想像以上に変わった。議会のあり方、理念がこういうものであるということに、変わってきたかという意味で。ただし、それを実感できる瞬間をどれだけ自分たちの自治体議会で持てているか、市民が実感できるか、という意味ではまだまだである。
千葉;議会の独立性というような意味では、この10年で、足がかりに届くのかなぁというところまで来るかと思っていたが。
○(千葉)今後の課題は?
中尾;条例の見直し、市民参加を十分ふまえてやってほしい。全部市民に見せる、ここが確保されなければ、改革は足踏みする。
江藤;議会改革が目的ではなく、成果に結びつけて市民に還元してほしい。市町村合併は一段落している。広域議会、一部事務組合議会への関与も必要。報酬、定数などのほか、条例体系の見直しが大きなひとつ。
高校生用の副読本、総務省発行の本。こういうものも活用してほしい。住民自治の根幹としての議会が動き出すような政治文化をつくってほしい。
廣瀬;自治体の政策課題は、多様化、細分化している。じゅうみんかrqすると、個別的な困りごとであり、漠然とした不安。いつまでここで日常生活が送れるのか、といった感覚が増加。
これに対して、個別の課題を一つひとつ潰していかないといけないが、サスティナブルな自治体の戦略が見えていない。議会はその戦略を、まちの将来の判断材料をきちんと市民に見せることができる、説明することができるようにするための、そのプロセスが現状の議会活動で出来ているのか。議会報告会などで、それに応え得るような調査や審査、議論、討議ができているのか示せるような活動が、4年の任期の中で少なくとも一度は市民に示して政策サイクルを回していくことが重要ではないか。
(フロアからの発言も複数ありましたが割愛します。関心のある方はFacebookもご覧ください)
さて、わたしの感想です。
議会基本条例は、8年前に議会に送り出していただいたときから、笛吹市議会でも漠然と実現したいと思っていました。
議会は何をしているのかよくわからない。どうせ変わらない。そういう思いを何とか変えていくことはできないか、新人議員として思いはだれよりも高く熱く持って、議会に「突撃」したつもりでした。
が、物事はそんなにカンタンに動くものでもないですし、今日のフォーラムでも言われていたように、議会は多様な住民の民意を反映した場でもあり、多彩なバックグラウンドを持つ人たちの集まり(でなければそれもヘンだし…)。
もちろん、数少ないながらも議会改革に同じ思いの先輩議員もいて、(長い経過は省略しますが)2回の議決事件化条例の提案もむなしく最初の任期が終わり、今任期で総務常任委員長となり議会改革の議論にも参加することができ、議会基本条例の小委員会で二十数回にわたる条例案の検討の中でイニシアチブをとらせていただきながら(抵抗も最後まで強かったですが)なんとか笛吹市議会基本条例を制定までこぎつけました。
ただし、笛吹市議会基本条例には、まちのビジョンであり市民の計画でもある総合計画の基本構想と基本計画の議決事件化が盛り込めませんでした。議員がこの最も基本的な計画づくりに関与する機会がないことに対する疑問や意識が、残念ながら持てていない議員もいることも事実です。この意義や重要性について、現段階の笛吹市議会では合意形成ができませんでしたが、今後の課題として良い方向に展開していけるよう努めていく必要があると感じています。
また、わたしが(議会報告会などで)市民の方々に申し上げたのは、議会基本条例を市民のみなさまが使い倒していただいて、「議員はちゃんと仕事をしているのか!」とハッパをかけてくださいということでした。もちろん、議員としてもこの条例を駆使して政策形成に資する議員活動・議会活動をしていきたいと思っています。
そういう意味で、栗山町議会基本条例から始まったこの10年の振り返りをしながら、あらためて感じました。
こうしてこのフォーラムに参加してくださっている先駆者や先輩議員、職員の方々の粘り強い取り組みの上に、その延長上に、わたしたちも乗せていただいて、それぞれの自治体議会というフィールドで活動することができているんだなぁと。
そして、これを後退させることなく、一歩を進めるのに大きなエネルギーが必要だとしても、これからの課題に一つ一つ取り組んでいくこと。そうしないと、市民の議会参加も、市民自治も実現し得ないのだということ。…などを再確認して、残りの任期をしっかり務めていかなければ!と心に誓いました!
(^^♪